京都大学学生チャレンジコンテスト(SPEC:Student Projects for Enhancing Creativity)

山極総長による寸評

 2015年度の採択プロジェクトはどちらかというと実験系のものが多かったが、今年は心理学的研究を活用したもの、食育の場づくりなど、「人」を相手にした「活動」が多い。SPECによって刺激を受けて、新たな試みが加わったのだろう。

 人を相手にするものだけに、注意すべき点がある。「移動式キッチン」の場合、活動の幅を広げた際に食品衛生法などを視野に入れる必要があるし、「未来アジアを考えるOne Week Japanツアー」もトラブルの際の対応策まで考えておかなければならない。

 喫煙運動ではたばこの値上げや公共の場での喫煙を禁じるなど、多重の方法により成果を上げてきた。「歩きスマホ撲滅」も本来はさまざまな方法が必要だが、今回は人の意識を変えるという単独のアプローチ。それによって何が変わるかを見ることで、歩きスマホ以外の別の現象への応用可能性が見えるかもしれないという期待感を持った。

 「関係志向性の機能」についてだが、身構えを捨てて気安く話しかけるためには訓練が必要なこともあり、異文化の中で適応するための方法論、方策まで考察できるとおもしろいと思う。

 自分たちのプロジェクトが、人々にどういう反応をもたらすのか。皆さんはこれから身をもって体験していくだろう。「LEGOでITERを建設」は、製作プロセス含め多くの人に見てもらうので、特に顕著かもしれない。人々の反応は、おそらく自分たちが考えていたものとは違う可能性が高く、その時にどうモディファイしていけるか。これからの見せ所になるはずだ。

 すべてのプロジェクトに言えることだが、「ICT(情報通信技術)」の活用もカギとなる。

 人と人とが面と向き合うことでつくられてきたコミュニティを、ICTによって瞬時に大きく広げることが可能な現代社会。しかし、我々の意識はそれほど変わっているわけではなく、「移動式キッチン」は、限られた人の間でのコミュニケーションに意味があるし、「プラットフォーム」も、どの程度の規模のコミュニティで行うか考えたほうがいい。スキル交換は当然、ICTを使ったほうが効率的なのだが、せっかく信頼関係を築いたのに、ICTに任せすぎることで炎上したり、別の方向に行ってしまうこともある。ICTの使い方に検討が必要だ。

 私自身、フィールドワークで何度も失敗をし、何度もフィールドを変えて研究をしてきたが、失敗は自分の糧となるもの。何かトラブルが発生した時、逆にそれを利用する方法もあるわけで、そのことを念頭に置きながら、たくましく取り組んでいってほしい。昨年とはタイプの違う取り組みだけに、成果に期待している。