医療倫理に関する対話型フィールド学習の開発

申請団体:京都大学医学教育を考える学生の会(KS-CoM)
代表者:医学部3回生 外山 尚吾

未来の医師に必要な倫理的課題に向き合い、
価値観の"ゆらぎ"に対峙できる
知性を磨くための学びの手法を開発

 近代から現代に至る社会構造の変化や科学の進歩に伴い、 私たちはさまざまな倫理的課題に直面してきました。医療分野も例外ではなく、 特定の疾病に対する偏見などの歴史的事柄や、 現代においても終末期医療や社会経済的格差など課題は枚挙にいとまがありません。
 これらの課題を見てみると、「誰が、何が正しいのか」という価値観は、 時代、立場、そして個々人によって変わる、非常に相対的なものであることがわかります。 価値観は"ゆらぐ"ものである、ということです。

 Bio-medical(生物医学)の枠組みのもとでは、価値観の"ゆらぎ"は弱さと捉えられることから、 医師になる過程において、"ゆらぎ"が生じないようにするために、知識を学び、 確実性の高い技術を目指すことが求められます。 むろん、この重要性は確かなものですが、このような従来型の教育で、 これからの医療で必要とされる、不確実性や多様性への耐性を養うことができるのでしょうか? 確実性を追求する時代とは異なる知性のあり方、またその鍛え方を模索しなければならないのではないでしょうか?

 私たちは本プロジェクトを通じて、実際に自らが"ゆらぎ"を経験しながら、 これからの医師に求められる知性とはどのようなものか、 またその学び方とはどのようなものかを明らかにしたいと考えました。

 価値観の"ゆらぎ"は、自分の前提的認識と現実とギャップを実感する時に生まれるものであることを踏まえ、 "ゆらぎ"の意味を振り返り、それをどうしたら医療は受け止め、 乗り越えていけるかを話し合う必要があります。 したがって、本プロジェクトでは下記のような3つのステップを踏み、 過去から現在に至る複数テーマについて、学びを促進させていきます。
 最終的には、価値観の"ゆらぎ"に対峙するための参加型学習プログラムとして、ワークショップの開催や学習方法論を紹介するサイトの作成を行い、 実践的な手法を世の中に発信していきたいと考えています。