京大生チャレンジコンテスト(SPEC:Student Projects for Enhancing Creativity)

人文学研究を支援するデジタルアーカイブサービスの開発

人文学と情報工学の両方の立場に依拠したWebサービスを構築し、人文学における共同研究を支援
申請者:情報学研究科修士1回生 太田 一行

 人文学の領域では、貴重資料の電子化とその公開によって、 原資料へのアクセスが容易になったことで、研究環境が大きく向上しました。 まだテキストデータになっていない画像資料をクラウドソーシングで翻刻したり、 大量の図像に注釈をつけるといった大規模な共同作業の事例が増えるなど、変化も見られています。

 最近では、Webでのデジタル資料画像共有の国際的な規格であるIIIF(トリプルアイエフ、International Image Interoperability Framework) が多くのデジタルアーカイブで採用され、資料画像の公開や共有方法の共通化が進んでいます。 一方で、資料の再利用をめぐっては、人文学の研究状況にも変化を及ぼすことが予想されます。

 私が提案するソフトウェアは、こうした電子資料の利用を人文学研究のために最適化した支援ツールです。
 このツール設計にあたって、文学研究の中では珍しい共同研究の事例と考えられる「テクスト生成論」が、 私が専門とする情報科学における「バージョン管理システム」と似ている点を利用しようと思い立ちました。
 テクスト生成論は、作品の解釈に際して、流通する書籍の形態と同様に草稿を重要視するという考え方です。 バージョン管理システムは、大量のソースコードの管理を集団で効率よく行うために考案されたもので、 両者は「大量の書き物に対する共同作業の方法」という点や、作業フローなどが似ています。 文学研究の一手法に情報工学の手法を取り入れることで、 人文学研究のために電子資料の利用の最適化を図りたいと考えています。

 この人文学研究支援のソフトウェアを「VCS-Mirador」と名づけており、すでにブラウザ上に仮実装を持っています。 今後の課題は、ユーザーサイドとサーバサイドの充実や強化、 さらに実際のニーズに対するヒアリングとユーザーエクスペリエンス(UX、ユーザー経験)調査などがあります。

   

 本プロジェクトはオープンソースプロジェクトです。開発にあたっては日本IIIFコミュニティの支援を受けており、 世界的なIIIFの潮流に貢献することも目標の一つにしています。