京大生チャレンジコンテスト(SPEC:Student Projects for Enhancing Creativity)

山極総長による寸評

①脳でオーロラは聞こえるか

 物理系と生物系、分野を超えて取り組むことがすばらしい。たとえクリプトクロムという分子が電磁波に反応せず、仮説が間違っていたとしても、それでいい。誰もが着目しなかった点に気づくことが重要だ。違った分野のメンバーが切磋琢磨して実験を繰り返すことで、新たな発見に結びついていくだろう。

 

②合成生物学の学生コンテストで世界の頂点に立つ

 “腸”がテーマというのは目の付け所がいい。私たちの腸内には数百種類、約100兆個の細菌がいるとされるが、未解明のことが多い。最近では、いろいろな企業が食品や薬剤の開発に注力しているので、そうした最先端にも目を向けながら、大学という場所の利点を生かし、基礎研究とイノベーションの両方を意識しながら進めてほしい。

 

③医療倫理に関する対話型フィールド学習の開発

 今夏に訪れた無医村では巫女さんが病人に寄り添っていて、それを見た東京からの医学実習生が驚いていた。医療というのは、一人ひとりがどんな人生を送るかに大きく作用する部分でもある。また、これから迎える人生100年時代の中心にあるのが医療であり、医療が変わらなければ生き方も変わらない。いろいろな現場での対話型フィールドワークを通して医療のあり方について考えていただきたい。

 

④食と農を取り戻すためのムーブメントを紹介

 おいしさや喜びということは、土地や文化によって異なり、データにはならないものなので、ショートムービーはよい手段だ。食は人間の生きる力であり、伝統を重んじる心、自らのアイデンティティの拠り所、おもてなしの心など、いろいろなものと結びついている。食を通して多くの人の思い、メッセージをぜひ伝えてほしい。

 

⑤人文学研究を支援するデジタルアーカイブサービスの開発

 研究者が文献と一対一で向き合うことの多い人文社会系の学問世界だが、このサービスは共同研究環境を整えて、新たな資料形成の場を提供してくれようとしている。人文社会系の知がどういう形で相互利用できるのか興味深いし、相互利用が進むことで新たな知の継承や利用方法も提案できるかもしれない。情報工学の技術からどう切り拓いていくか、期待している。