京大生チャレンジコンテスト
(SPEC:Student Projects for Enhancing Creativity)

京大生チャレンジコンテスト2019 京都大学学生チャレンジコンテスト
学年は申請当時

「命を救え!」~行動に移せる勇気を小学生に

申請団体:新生Wild Idea
代表者:医学研究科修士2回生 小池 佳菜子

<2021.2.25 更新>

【Stay home, おうちであつこズ】
代表を引き継いだ林田真来(医学部人間健康科学科3回生)です。

新型コロナウイルスの影響で私たちが目標にしていた小学校訪問の活動が困難になり、今後の計画を練り直しました。話し合いの結果、現在の教育機関の状況を考慮して、慌ただしさが落ち着いてから小学校への交渉を再開することにしました。
今の期間でできることをやる、これをモットーにさまざまな取り組みを行っています。交渉準備に加えてさらに以下のような活動を行いました。

①勉強会の開催
オンライン下で行ったことの一つが、一次救命処置に関する勉強会です。毎回メンバーがテーマを持ち寄り、発表したあとにそのテーマについてみんなで意見を言い合う発表+ディスカッション形式をとりました。
あつこズのメンバー以外にも興味を持って参加してくれた方もいて、現時点で第5回を数えています。
オンラインにおいても、少しでも多くの方々が気軽に一次救命処置について勉強でき、話ができる場所をつくることを目的にしています。
今までの勉強会の内容は以下のとおりです。

第1回 2020年12月27日(日)
テーマ「救急救命士ってどんな仕事?」
救急救命士の基本的な仕事内容から現状まで広く取り扱いました。 実際に救急救命士を目指している学生も参加してくれ、普段は聞けない「素朴な疑問」がたくさん解消されました。

第2回 2021年1月9日(土)
テーマ「AEDの歴史」
日本でどうやってAEDが広まっていったのか、などAEDのルーツについて学びました。さらに他国との比較しながら、日本でもっと普及率だけでなく使用率を上げるにはどうすればいいか意見を出し合いました。

第3回 2021年1月17日(日)
テーマ「シアトルの救命事情」
市民の救命活動、救命率がとても高いことで有名なシアトルの取り組みについて取り上げました。新しい疑問が次々と出てきて、たくさんの宿題が出た回でした。

第4回 2021年1月23日(土)
テーマ「離島の救命事情―鳩間島の経験を胸に―」
沖縄県の病院のない鳩間島でメンバーが行ったインタビューと経験談を紹介しました。
離島でどのような取り組みが行われているのか、離島の救急医療の現状について取り上げました。離島でどんなことができるか、さまざまなアイデアが出されました。

第5回 2021年2月6日(土)
テーマ「胸骨圧迫とAEDの素朴な疑問」
実際に人が倒れている時は、やっぱり講習を受けていても想定できないこと、実はあやふやでわかっていなかったところが出てくると思います。そんな時に実際にどう行動すればいいのか、呼吸の基礎知識から考えていきました!

これからも定期的に行っていく予定です。

②競技にもっと多様性を!
競技にもっと多様性を~オンライン救命の連鎖編~
今まで実際に小学校に赴いて行っていた競技・救命の連鎖。しかし今回は見方を変えてGoogleフォームを使った「ゲーム・救命の連鎖」を考案中です。
このゲームでは一次救命処置の流れを正しい選択肢を選びながら覚えていくものになっています。
選択肢を選んだらなぜそうしないといけないのか次のページで解説されるようになっています。・間違えると、最初からやり直しに! もともとの救命の連鎖と同様、クリアまでのタイムを競うものとなっています。
このゲームの目的は、基本的には救命の連鎖と同様、
・人と協力し、楽しみながら一次救命処置のやり方を学ぶ
・いざ実際に一次救命処置をする場面に将来遭遇した時にすぐに行動できるよう、心理的バリアを取り除く
以上に加えて
・オンラインの中でも一次救命処置について知ってもらい、興味をもってもらうきっかけをつくる
ことを目的に現在創作中です。
まだ試作段階ですが、今後は小学生をはじめとするさまざまな方にやってみてもらいながら改良していく予定です。





③広報活動
私たちは、若者が一次救命処置に興味を持って、何か行動を起こすきっかけになることを目的に、若者ツールの代表格であるSNSや動画共有サイトを駆使して情報発信をしています。
今回、さらにYouTubeを積極的に使っていくことにしました。
YouTubeを利用する目的は次の3点です。
・私たちの活動の認知度を上げることで社会全体の意識改革を行うため
・活動メンバーを募るため
・小学生にもわかりやすく一次救命処置や競技について紹介するため
TwitterやFacebookを中心に、私たちの活動や一次救命処置にまつわるエピソード、クイズなどを毎週発信しています。また、学生向けに一次救命処置について学べる動画を作成中で、YouTubeにも投稿していく予定です。競技動画や、活動紹介動画に加え、一次救命処置そのものの大切さが伝わり興味をもってもらえるような動画を投稿していこうと思います。

Twitter https://twitter.com/aed_students
Facebook https://www.facebook.com/aed.students
YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UC4pwB1cqJcc8kOn3LlFb73Q

【今後に向けて】
まだ小学校への交渉は調整中ですが、小学校の状況把握(校内行事の延期・中止、長期休み・補講状況、新学期情報など)を進めて交渉を検討・調整しています。また、サポーターメンバー(あつこズ)をもっと増やすためにオンラインでも行える体験講座の実施も新入生入学次期に向けて計画しています。まだ通常の活動が制限されている状況ですが、コロナに負けず、今だからこそできることをどんどん行っていこうと思います!

<2020.10.26 更新>

【心強い先生がコーチとなってくださいました!】
代表を引き継いだ林田真来(医学部人間健康科学科3回生)です。

今後私たちが活動を進めていくにあたり、明治国際医療大学の坂梨秀地先生がコーチとなりサポートしてくださることになりました! サポートいただく理由は、私たちの活動を円滑に進め、私たちが所属する外部の団体の一員として責任ある行動を全うするためです。私たちのことを気にかけ応援してくださるとても心強い存在でもあります。ここで、坂梨先生にもメッセージをお願いしたのでご紹介させていただきます。


「この度、あつこズのアドバイザー役として関わらせていただくこととなりました、明治国際医療大学の坂梨(@救急救命士)と申します。あつこズの活動は、救命活動の知識を楽しく広めるために、主に小学生対象に心肺蘇生法の普及活動を行っています。
日本は、年間約8万件の心肺停止が発生し、病院に運ばれている現状があります。ですが、倒れている人を発見した人が胸骨圧迫や、AEDを使用することにより助かる命がたくさんあります。これは、小学校教育から段階的に教育していくことが重要とされていますが、なかなか実現できていないのが現状です。
そんな中、あつこズの活動が身近な命を救うことできるとても重要な活動をされています。そこで、救急救命士としてあつこズの活動の手助けとなればと思い、活動のサポートをさせていただくことになりました。この活動をもっと多くの子どもたちに普及し、多くの命が救われることを願い、できる限りのサポートをしていきたいと思います。何卒よろしくお願いいたします。」


競Twitterより引用:https://twitter.com/univiii?s=09
【ユニビー!にも登録しました】
ユニビーとは、現役京大生が開発した、授業情報の共有、サークルや部活の連絡・運営、友達付き合いなどが行える大学生専用のSNSアプリです。サークル探しに使っている新入生も多いようで、一緒に活動してくれる仲間を増やせたらと思っています。またそれに加えて、SNSと同様に私たちの存在や活動を知ってもらうことで、新入生に限らず大学生に一次救命処置の大切さを広めていきたいと考えています。

【SNS紹介】
前回も紹介させていただきましたが、私たちのSNSアカウントです。
Twitter:https://twitter.com/aed_students
Facebook:https://www.facebook.com/aed.students
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UC4pwB1cqJcc8kOn3LlFb73Q

毎週更新しているTwitterやFacebookでは、活動紹介だけでなく、豆知識の紹介やクイズも行っています。ぜひチェックしてみてください!

【最新版のリーフレットをご紹介!】
大学生などこの活動を一緒に行うく人たち向けのリーフレットを新しくしましたのでここに掲載します。私たちは新歓時期や回生に関係なく、メンバーを募集しています。 多くの人々を巻き込んでこの競技の輪を広げ、若者にとって一次救命処置を身近な存在にしていけたらと思います。




【今後について】
少しずつ人と会ったり集まったりができるようになってきました。とはいってもいまだ状況は厳しく、小学校や児童館に集まっての活動は状況を見ながら行っていくつもりです。 継続してイベントの開催の準備を進めつつ、少人数単位で大学生サポーターの養成を行ったり、オンラインでの活動を充実させたり、できることをやっていこうと思います!

<2020.6.10 更新>

【Stay home, おうちであつこズ】
代表を引き継いだ林田真来(医学部人間健康科学科3回生)です。

新型コロナウイルスの影響で私たちが目標にしていた小学校訪問の活動が困難になり、今後の計画を練り直しました。話し合いの結果、現在の教育機関の状況を考慮して、慌ただしさが落ち着いてから小学校への交渉を再開することにしました。
そこで、この期間を「準備期間」と位置づけ、状況が収まり次第、いつでも小学校への交渉ができるようにさまざまな活動を行いました。具体的な内容は以下の通りです。

①交渉先リストの整理
主に大阪・京都・兵庫の小学校、スポーツチーム、公民館、他の学生団体など、小学生を対象に競技を実施することができる可能性のある施設・団体をカテゴリ別にリストアップしました。アクセス条件、在校児童数といった具体的な情報もわかる限り調べ、いつでも交渉に伺えるよう準備を進めています!

②オリジナルイラスト・Tシャツなどの作成
小学生に楽しく学んでほしい、そして私たちももっと楽しく活動しよう!ということで、イラストレーターの方に依頼して資料に用いるかわいいオリジナルイラスト、団体Tシャツなどを創作しました。イラストやTシャツのデザインには、多様性をテーマに、肌の色、性別を問わず、大人も子どもも一緒になって一次救命処置になじみをもってもらいたいという想いを込めています。
イラストでさらに親しみやすさをUPさせ、心理的ブレーキの軽減を目指して、若者が一次救命処置を身近に感じられるツールを提供していければと思います。このイラストたちと一緒に楽しく真面目に頑張っていきます!
以下イラストの一部とTシャツの紹介です。


「AEDスイッチオン!」のイラスト。
手づくりのAEDは、スイッチを押すと3本の紙笛が飛び出します!

競技に取り組む子どもたちの様子が伝わるイラストです。
この競技の特徴は「楽しい!」「みんなでできる!」「やりたい!」という子どもたちの気持ちが引き出されるところにあります。

“救命の連鎖”のイラストも描いていただきました!

Tシャツのデザインです。この活動の始まりは、2016年に行われたアイデアコンペティションであるため、「SINCE 2016」の文字を入れました。
③競技にもっと多様性を!
競技準備も行いました。今までの競技は、体育館を想定したある程度広めのスペースや40人程度の人数を想定していましたが、環境に左右されることなく、なるべく多くの場所で競技を行いたいと考え、少人数・小スペースでも実施可能な「小規模版」の競技を考案しました。ここに一部公開したいと思います。

今回紹介するのは2つです!

1つ目は、体育館ほどの競技スペースを確保できず、かつ少人数で行う際の「小規模版」です。中京青少年活動センターの中会議室(7m×8m)をお借りして、最低限必要な広さと人数を考えました。
2つ目は、「借り物競争版」です。「競技実施環境以外にも、さまざまなシチュエーションを盛り込んだ競技にしてはどうか」という山極総長からいただいたコメントも踏まえ、シナリオのパターンを増やして、新たな競技の形を試行錯誤し、AEDを探すステップを組み込みました。この新たなステップによって、より子どもたちが競技を楽しめたり、身の回りのどこにAEDがあるか普段意識するきっかけになったりするのではないかと考えました。
実際の競技案はこちらをご覧ください

④広報活動
私たちは、若者が一次救命処置に興味を持って、何かの行動を起こすきっかけになることを目的に、若者ツールの代表格であるSNSを駆使して情報発信をしています。TwitterやFacebookを中心に、私たちの活動や一次救命処置にまつわるエピソード、クイズなどを毎週発信しています。
今回、さらにYouTubeを積極的に使っていくことにしました! YouTubeを利用する目的は3つで、私たちの活動の認知度を上げることで社会全体の意識改革を行うため、活動メンバーを募るため、そして小学生にもわかりやすく一次救命処置や競技について紹介するためです。
現在、学生向けに一次救命処置について学べる動画を作成中で、YouTubeにも投稿していく予定です。競技動画や、活動紹介動画に加え、一次救命処置そのものの大切さが伝わり興味をもってもらえるような動画を投稿していこうと思います。

Twitter:https://twitter.com/aed_students
Facebook:https://www.facebook.com/aed.students
YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UC4pwB1cqJcc8kOn3LlFb73Q

【運営メンバーとサポーターメンバーが増えました!】
1人目は、運営メンバーとして参加してくれる京都大学医学部人間健康科学科3回生の平野湧真さん。2人目は、サポーターメンバー(あつこズ)として参加してくれる大阪大学薬学部2回生の西中康介さんです! やはり人数が増えると今後の活動にも幅が出て頼もしい限りです。今回は2人から意気込みメッセージをもらっているので載せたいと思います。


左が平野湧真さん、右はメンバーの髙橋翼さん
「この活動を通して一次救命の知識、理解を深めるとともにこれからの未来を担う小学生に少しでも興味を持ってもらえるように頑張ります。(平野湧真)」



西中康介さん
「僕は生まれた時からファロー四徴症という心臓の病気を患っていました。2歳の時に手術を受け、小さい頃はスポーツの制限がありました。周りの環境に恵まれていたので、大きくなるにつれて自分の心臓病についてあまり考えなくてもいいくらいに良好な状態になりました。しかし、18歳の夏に急に立ったり笑ったりすると胸痛を感じるようになって入院することになりました。しばらくするとその症状は軽くなりましたが、原因はわからないままだったので、翌年の夏にカテーテル検査するためにまた同じ病院に入院することになりました。19歳にもなって循環器科の小児病棟で入院していると、夜にずっと鳴り響いているナースコールから子どもたちの闘病の様子が見えてきて、僕は少しでも自分と同じような心臓病と闘う人の手助けをしたいな~と思いました。心臓病に関するエピソードをつらつらと述べてきましたが、要は心臓の病に関心があって急に来る胸痛の怖さを、身をもって体験しているので、この活動に参加させていただきました。自分は京都大学生ではないので、参加できる頻度は多くはないと思いますが頑張ります。よろしくお願いします。(西中康介)」

【今後に向けて】
まだ小学校への交渉は調整中ですが、小学校の状況把握(校内行事の延期・中止、長期休み・補講状況、新学期情報など)を進めて、早くても夏休みからの交渉を検討・調整しています。また、サポーターメンバー(あつこズ)をもっと増やすためにオンラインでも行える体験講座の実施も計画中です。まだ通常通りの活動が制限されている状況ですが、コロナに負けず、今だからこそできることをどんどん行っていこうと思います!

世界初!骨標本に「吐き戻し」という新カテゴリーを

申請団体:Paleontology Superheroines
代表者:理学研究科修士1回生 瀬岡 理子

<2021.3.1 更新>

■活動報告
私たちPaleontology Superheroinesは、サメの嘔吐物の標本化、ひいてはサメの嘔吐行動の解明を目標として活動を開始しました。普段は古生物を研究している私たちにとって、化石標本を新しい基準で評価するための重要な研究となるはずでした。しかし結果から申し上げると、この一年で嘔吐物標本の採集はおろか、生きたサメの遊泳を観察することすら叶わず鬱屈とした時間を過ごすことになってしまいました。前々回、前回に報告させていただいた予備観察を行うことはできましたが、当初予定していた活動はほとんど実行に移せていないのが現状です。

■「コロナ渦」の一年を通して
新型コロナウイルスの影響下で、学生に求められた最善の行動は「何もしない」ことでした。一時期は家から出ることもためらわれ、大学に行けたとしても人目を憚るように研究室に出入りする日々が続きました。研究のために連絡をとっていた水族館との連絡は絶たれました。私たちは物理的な制限のほかに、「活動を続けようとするべきか?」という特殊な状況下での倫理観を試されたのでした。次々に浮かぶ自分の葛藤も、各方面からのアドバイスも、どれが正解かわからずに右往左往するしかありませんでした。
この一年を「準備期間にしよう」と割り切るまでには多くの時間が必要で、これは非常に難しい選択でした。「何もしない」という社会のために私たちにできることをしながらも、自分たちのためにできることは、しかるべき時のための準備でした。

■準備期間
私たちはいずれサメを観察することは諦めていませんが、その活動を最大限に有意義なものにするために一度サメから頭を切り替えることにしました。サメ以外のさまざまな生物の消化器官や胃内容物に関する文献調査をはじめとし、エイ(サメの仲間)、ウミガメ、スッポン、タヌキ、テン、オオサンショウウオ、硬骨魚類(マゴチ、マダイ、ギンザメなど)、鳥類などの解剖、胃内容物の観察・収集を行いました。


写真1

写真2
(写真1)
ウミガメを解剖し、腸の中を確認する様子。中には消化途中の貝の仲間が沢山入っていました
(写真2)
テンの解剖の様子

これらを通じて、1年前と比較して解剖の技術の向上も感じられています。消化管とその他の内臓を正しく切除し、どの部分をどのように保存すべきかという基準も、自分たちの中で徐々に明確になっています。
得られた胃内容物の中には、嘔吐物に想定されるさまざまな段階での消化(ほとんど溶けていないものから液状のものまで)が認められています。これらの標本をどのように整理しサメ研究に役立てていくかを考えるのはこれからですが、たとえ小さな一歩でも目標に歩き始めているという実感がようやく得られています。

■最後に
新型コロナウイルス流行の終息について、ワクチン接種開始など明るいニュースが聞こえてくるようにもなりましたが、まだしばらくは不自由な生活が続くと予想されます。私たちは当初の目的は忘れないまま、サメ以外の魚類や両生類、そこから我々人間を含む哺乳類の消化にも広く目を向けていこうと思います。
来年度はこの1年で蓄えたエネルギーで新しいスタートを切ろうという気持ちでいます。現在メンバーはたった2人ですが、来年度も同じ研究室に在籍して研究を続けていきます。研究室には新しいメンバーを迎えるので、同じような興味を持つ仲間が増えることにも期待しています。

SPECで活動を行うにあたり標本の収集に協力していただいた多くの皆様、選考会からさまざまなサポートをしてくださった担当者様、私たちでは気づかない切り口からの印象的な講評をいただきました山極前総長にこの場をお借りしてお礼申し上げます。一年間ありがとうございました。

<2020.10.23 更新>

4月以降、新型コロナウイルスやメンバーの体調不良などでほとんど活動ができない状況が続いていましたが、今月から徐々にできることが増えてきておりほっとしています。まだまだ新型コロナウイルスの影響はありますが、このような社会情勢でも活動ができるよう、少しずつ工夫していこうと思います。
今回は解剖の練習としてネコザメとギンザメの消化管の観察を行った結果を報告させていただきます。


写真1
(写真1)
ネコザメ(Heterodontus japonicus)は太平洋北西部の浅海に生息するネコザメ目ネコザメ科の一種です。サザエや甲殻類を噛み砕いて食べるため、サザエワリとも呼ばれているそうです。
一方ギンザメ(Chimaera phantasma)も日本海沿岸に生息する軟骨魚類で、貝や甲殻類を主食としています。名前には「サメ」がついていますが一般的にサメと呼ばれる板鰓類の仲間ではありません。通常サメにはエラが5対(種によっては6~7対)あるのに対し、ギンザメの仲間は1対あるのみです。ギンザメの仲間は全頭類と呼ばれます。
ネコザメは現時点で吐き戻しの報告は確認できていませんが、サメの基本的な体内構造を知るため、同じ硬骨魚類であるギンザメと比較しながら解剖を行いました。


写真2
(写真2)
ギンザメの腹を開いた状態が写真の上側(肝臓は除去)、消化管を取り出し切り開いたものが写真の下側です。体外に垂れ下がった黒っぽい臓器が消化管です。
消化管は食道から肛門にかけて直線的で、胃と腸の区別は外見ではわかりません。全体的に腸壁はなめらかで、大きな襞なども観察されませんでした。
腸からは消化途中のエビが採取できました。こちらは保存しておき、「消化されている途中の餌生物」の特徴を発見できないか、別途観察を行う予定です。


写真3
(写真3)
ネコザメの腹を開いた状態が写真の上側(肝臓は除去)、消化管を取り出して腸の部分を切り開いたものが写真の下側です。薄ピンク色の臓器が消化管で、それぞれ1本の管としてつながっています。ネコザメの腸は胃と腸の間で大きくねじれており、くびれになっているためそれぞれの区別がつきます。
腸を観察すると、内部に弁が複数並んでいるのがわかります。サメの糞はとぐろを巻いたような形が特徴で、この形のまま化石として残ることもあります。このとぐろのような形の要因として考えられているのがこの腸内部の弁です。らせん状に消化物が腸内を通ることで、独特の形をつくると考えられます。
ネコザメの消化管からは残念ながら何も採取できませんでした。

吐き戻しについて今までの報告を調べたところ、口から胃を出して内容物を吐き出すには体腔内で胃が他の内臓に付着せずある程度自由になっていることが条件の一つであると考えています。今回解剖したネコザメは胃の大部分が他の内臓と付着していました。解剖による観察に限って言えば、ネコザメは吐き戻しに向いていない構造をしているようです。

今後は今回行ったような解剖を複数種行い、種ごとに傾向があるのか、どのような体構造が吐き戻しに向いているのかを調べます。また、可能な範囲で水族館において行動観察を行い、吐き戻しの条件の調査や吐き戻した餌の採取を行う予定です。

<2020.6.10 更新>

私たちは、サメをはじめとした生物の嘔吐物の標本化、そしてそれを用いて標本から形態系の中の「消化」を捉えることを目標にしています。
現在のコロナ渦で、私たちも例に漏れず十分な活動を行えていません。水族館や動物園での標本採取や行動観察を考えていましたが、最近まではどこも休館で、まだしばらくは満足な研究活動ができるとは言い難い状況です。


新生代の陸棲哺乳類の糞化石

糞化石中に含まれる被食動物の骨(赤丸で示した部分)
今回は4月までに行った薄片作成作業についてご紹介いたします。
私たちが所属する地質学鉱物学分野には、岩石や化石を薄片にする設備技術があります。数μmという光を透過する厚さまで標本を切り、顕微鏡で観察できる状態にします。

アメリカのサウスダコダ州から産出した、新生代の陸棲哺乳類の糞化石を薄片にして観察を行いました。この標本には肉眼でも観察できるほど餌生物の骨が多量に含まれており、捕食者が消化を行った証拠となる指標の一つがつくれるのではと期待しています。糞化石中の消化物の標本がうまく作成できれば、現生種の標本や嘔吐物標本との比較もしやすくなります。

骨片を含む顕微鏡写真では、被食動物の骨(赤丸で示した部分)がよく観察されます。どういう状態の骨を消化の証拠とするかは未だ検討中ですが、化石になる前に胃酸によって侵食されていたのではと考えられる箇所がいくつか観察されました。
これらのような証拠を集めて分析していくことで、標本における消化についての理解を深めていければと思います。
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今年度はこのような社会情勢の中、私たちだけでなくさまざまな分野の研究活動が制限されていることと思います。今本当にすべきことは何か、何をしても良いのか、毎日いろいろなことを考えさせられます。研究活動を休むことが、再会への近道であるという矛盾に苦しむ日々です。一個人にできることを積み重ねていくことが1日でも早い事態収束につながると信じています。

風を見つけて高く遠くへ~トンビの飛行法を模倣した
ドローンの長距離飛行の挑戦

申請団体:ドローン・ディープラーニング研究会
代表者:農学研究科博士後期課程1回生 大西 信徳

<2021.2.26 更新>

開発していた固定翼型のドローンMigransが遂に完成しました(写真1)。Migransは通常航空機型のmodel Zと、翼の面積が大きく上昇気流の捉えやすいmodel Vを作成し、さらに練習機としてGPSなどを積んでいないCaracaraを準備し、フライト試験に臨みました。

写真1:作成した固定翼タイプのドローン
一番奥の黄色の機体がMigrans model Z、手前の白い機体がMigrans model V、真ん中の小さい黄色の機体が練習機の
Caracara
Migransは3Dプリンターで作成した機体に姿勢制御コンピューターやGPS、受信機などを搭載しています。これらの配線や動作確認などは情報が少なくかなり苦戦しましたが、最終的に下図の配線ですべての問題が解決しました(参考:配線図参照)。プロペラ、モーター等の部品は、機体性能に合わせて選びました。安定した飛行には重心位置が重要であることがこれまでの実験からわかっていたので、機体の重心が適切な位置に来るようにこれらの部品の位置を調整し、機体を組み上げました。

機体は、電波法認証済みのテレメトリーモジュールによってパソコンと無線で通信されており、ソフトのMissionPlannerから機体のGPS位置や速度、バッテリー残量などを確認することができます(写真2)。これらによって通常のドローンのように安定した飛行や設定した目的地への飛行などが理論上可能となりました。そして、気流を捉え上昇するためのardusoar (Tabor et al. 2018)も実装しました。ardusoarは指定した高度から滑空した際に本来より高度が落ちなかった場合に上昇気流があると判断し、旋回しながら上昇するアルゴリズムです。これにより、気流を捉えて効率的に上昇し、設定したルートに沿って飛行することがシステム的に可能となりました。
本番の試験ではマニュアル操作での離陸の後、MissionPlannerで設定した飛行ルートに沿って飛行し、ホームに帰還するように設定しました。また、PCや送信機から電波が切れた際にも帰還するよう安全面も配慮しています。


写真2:MissionPlannerの操作シミュレーション画面
左の画面は速度や高度など、現在の機体の状態を表示し、右の画面は設定した飛行ルート、現在の機体位置と向き、飛行したルートを表示しています
練習機のCaracaraを使って、マニュアル操作による離陸練習をした後、Migransの飛行試験に臨みました。果たして本当に飛行できるのか、緊張の中で迎えたフライトは、残念ながら安定して離陸することができませんでした。この原因の一つにMigransが固定翼型タイプであることが挙げられます。固定翼型ドローンの多くは離陸時にある程度の速度が必要です。そのため離陸は投げおろしや滑走路からの離陸が理想的です。実際の試験では100mの長さは確保できたものの、地面が芝生であったために車輪と地面の摩擦が大きく、離陸に必要な速度が出ませんでした。その後、機体をMigransからModel V機に替え、部品を移植して飛行させることも予定していましたが、残念ながら部品の故障により飛行試験は断念せざるを得ませんでした。
Migransの離陸が安定していればその後の自動飛行がうまくいったかはわかりません。これまでも、機体の作成や飛行試験を通し、重心位置や適切なモーターの選定など、さまざまな課題にぶつかっては解決してきました。今後も、機体の離陸に関する問題をはじめ、一つひとつの問題に対し試行錯誤して解決していく必要性がありそうです。
このプロジェクトではトンビのように上昇気流を捉え飛行するドローンの開発を目指してきました。上昇気流を利用できるドローンには固定翼型ドローンがあげられますが、これらの多くは、離陸に長い滑走路を必要とします。このことは、日本国内で試験できる場所が限られてしまう点や、実用的にも狭い土地で運用できない点から課題があります。現在、滑走路を必要としない垂直離陸のできる固定翼型ドローンなどが開発されてきており、今後そういったドローン開発の重要性を実感しました。


■プロジェクトを通して
このプロジェクトでは非常に多くの知識と経験を得ました。このプロジェクトに集まったメンバーは当初ドローンのつくり方はもちろん、電子工作の経験もほとんどない専門外のメンバーでした。最初にまずどういったドローンをどのようにつくるのか、メンバーで話し合い、必要な物品や配線の仕方、生じた課題に対する解決策を模索しました。結果として当初掲げていた目標には届きませんでしたが、ドローンの構造や制作工程を理解することができ、見えてきた課題を通して、今後も活動を続けていきたいと思います。

■最後に
皆様のご支援のおかげで今回の活動やドローンの開発を行うことができました。京都大学、そしてSPECでご支援いただいた皆様、大変ありがとうございました。


参考:配線図
中央の姿勢制御コンピューターにはジャイロや加速度計が搭載されています。さらに外部の速度計やGPS情報をもとに姿勢制御コンピューターにインストールされたシステムardupilotが羽やプロペラなどの各モーターの挙動を制御しています。パソコンと機体はテレメトリーモジュールによって通信されており、機体の状態などを確認できるだけでなく飛行ルートなどを設定し、指示を送ることが可能です。送信機によるマニュアル操縦もでき、飛行途中でのパソコンの自動操縦との切り替えも可能です。

<2020.10.19 更新>

1.経過報告
私たちはSPECで、トンビの飛行法を模倣したドローンの長距離飛行を目標に掲げ、研究開発を行っています。

予定から1カ月遅れましたが、開発を進めていた試験飛行用の機体Migrans 1が完成しました。3Dプリンターで作成した外枠にブラシレスモーター、サーボモーター、バッテリー、受信機等を搭載しています。またプロペラおよび補助翼等の安定した挙動の確認ができ、飛行の準備が整いました。ただ搭載を予定していた自動操縦用のマイクロコンピューター(pixhawk)は搭載していません。これについて大きな課題となっており、接続した際モーターが動作しないという障害が生じています。配線の仕方、内部システムの設定など時間をかけてさまざまな方法を試みましたが解決策が不明のため、Migrans 1はpixhawkを搭載しないモデルとして、飛行テストを行うこととなりました。

2.今後の予定
Migrans 1の飛行テストを11月に行うことを検討しています。この飛行テストでは搭載したバッテリーの重量、配置、モーターの馬力などを含んだ飛行の安定性を確認します。
自動操縦可能なドローンMigrans 2の開発ですが、pixhawkの不具合の原因の究明や別の方法の模索と同時に、機体の3Dプリンターによる出力、モーター等の接続・配線を行っていく予定です。
全体の計画について、新型コロナウイルスの影響と、予想を超える開発の困難さ・不具合から当初の予定から遅れが生じています。そのため機械学習での気流を捉える方法ではなく、気流を捉える既存の手法を実装し、上昇成功時のログデータから上昇に影響する要因および効率的に上昇気流を発見する方法について調査研究する方向で検討し直しています。
残された時間が少なくなってきましたが、当初掲げていた目標になるべく近づけるよう引き続き頑張っていきます。

<2020.6.8 更新>

1.経過報告
私たちはSPECで、トンビの飛行法を模倣したドローンの長距離飛行を目標に掲げ、研究開発を行っています。現在は新たに2人のメンバーが加わりました。ただ、全員にとって分野外の研究内容であるため、文献などを調べ研究計画を練りながら進めています。
新型コロナウイルスの影響等により、いくつか予定を変更しました。まず当初予定していた固定翼ドローンの購入については、海外からの物品到着の遅れが想定されたこと、さらに墜落時のコストおよび内部システムの改造の困難さも考慮し、新たに固定翼ドローンを組み立てる方向に変更しました。


作業は外部構造・内部構造の担当を分担し、進捗を報告しながらリモートで行っています。現在作成しているドローンは3Dプリンターの出力サイズと操縦のしやすさから、予定よりサイズが一回り小さい試験飛行用のドローンです(Migrans 1)。ドローンの外部構造は3Dプリンターを使い、翼長1.2mのグライダーモデルを出力しました(写真)。内部構造はGPS・受信機・気圧センサー・自動操縦マイクロコンピューター等の接続を行い、挙動と自動操縦システムの構造を調べています。また、シミュレーターを用いて操縦の練習も並行して行っています。

2.今後の予定
まずモーター・バッテリー等を接続してMigrans 1 を完成させ、挙動の確認、基本的な飛行と自動操縦が可能であるかの試験飛行を行うことを予定しています。また、新たにサイズの大きい本試験用のドローン(Migrans 2)の作成も行っていきます。
次に気流を捉えるセンサーの追加と飛行学習を行うことを予定していますが、飛行戦略や学習の仕方によっては屋外での学習時間が短くなり、学習の成功率も変わることが予想されます。特に現時点では屋外での学習時間はできる限り短い方が望ましいため、今後さらに文献の調査とプログラムの解読を進め、最適な手法を模索していきます。
本番の飛行は10月頃を予定しています。

聴覚障がい者が楽しめるバリアフリー寄席の開催

申請団体:京都大学落語研究会
代表者:経済学部2回生 田中 健志郎

<2021.2.19 更新>

1.経過報告
2度目の緊急事態宣言を受け、対面での活動は行えない状況が続いていますが、3月のオンライン開催に向けて着実に準備を進めています。当初の予定は、「字幕落語」と「共感照明」により、同じ空間で耳の聞こえない人と聞こえる人が楽しめる寄席を提供するというもので、向日市の要約筆記サークルとの連携を予定していましたが、新型コロナウイルスの影響を受けて、大幅にやり方を見直すこととなりました。感染防止用のアクリル板に網戸を張り映像を投影する「アミッドスクリーン」の準備も進めていたものの、2度目の緊急事態宣言を受け、複数人での対面活動ができなくなり、そこについても見直すことになりました。3月に行うオンライン開催のバリアフリー寄席では、演者が各自の家において完全セルフで収録することになりました。そのため、以下の課題が新たに生じました。
●どのように客の笑い声を再現するのか。
「耳の聞こえる人と聞こえない人が同じ空間で一緒に笑う」という本プロジェクト目標の性質上、対面での寄席が行えない以上は、何らかの工夫を施す必要がありました。特に「情感照明」に関しては、寄席での笑い声を照明によって視覚化するというものでしたが、そもそも通常の配信公演において笑い声は聞こえないため、どのように配信において笑い声を再現するかについて悩みました。試行錯誤を繰り返した結果、Zoomを利用して一部の観客の顔を演者の上側に投影することで、笑い声を再現するという方法を考えました。この方法は当初予定していた照明よりも視覚的にわかりやすく、バリアフリー寄席に限らずともお笑いや音楽ライブの配信公演において観客のライブ感を演出できることにつながるのではないかと考えています。


●自宅では演出の幅に限界がある。
自宅では投影できる壁の大きさやプロジェクターの距離などに限界があり、セルフ撮影のためアングル数なども制限があります。そこで、今回は収録したものにさらに動画編集を加えることにしました。生配信が行えないのが痛恨の極みではありますが、より「笑える字幕」にすることを優先して、収録という形で行うことにしました。

2.今後の展望
対面での開催はひとまず断念して、オンラインでの開催を3月に行います。より多くの方々に見てもらうために、3月末に行われる11月祭の企画として出展する予定です。新型コロナウイルスの影響を受けて、当初の予定から考えると不本意な形とはなってしまいましたが、身体が不自由で寄席の会場に来るのが困難な方、日本語を母語としない方など多様なバックグラウンドを持つ人にも笑ってもらえるような機会がオンラインでの開催には秘められているのではないかと感じています。何よりもコロナ禍で対面での開催ができない状況において、さまざまな障壁を乗り越えるべく、いずれは対面での開催もできるように試行錯誤を続けていきたいと考えています。

<2020.10.15 更新>

1.経過報告
2020年8月26日に予定されていたバリアフリー寄席が延期になり、来年春の開催を見据えて準備を進めています。新型コロナウイルスがいつ収束するか分からない中、感染予防対策と本プロジェクトをなんとか両立させられないか考えた結果、口演の邪魔となる感染予防対策のアクリル板を逆に活用するアイデアを思いつきました。そのシミュレーションを行うために機材を購入して、アクリル板の裏に網戸を張った舞台装置を組み立てています。
この装置が完成すれば、透明なアクリル板に映像を投影することができ、演者の飛沫を防ぎつつ、字幕などの映像を演者に重ね合わせることができます。そのことで、当初は背面にスクリーンを2つ設置する予定だったのが1つに集約でき、観客の目線を分散させずに字幕と演者の両方を楽しんでいただけるようになります。また、映像や画像を演者に投影することができるため、落語に出てくる道具の説明や、噺の内容に応じた演出などさまざまなものを現在考えて準備しているところです。


2.今後の展望
「耳の聞こえる人と聞こえない人が同じ空間で一緒に笑う」という本プロジェクト目標の性質上、新型コロナウイルスの動向に左右されてしまうというのが正直なところです。オンラインでの開催なども視野に入れていますが、その場合、耳の聞こえる人と聞こえない人をどのように笑わせるのか、そもそも肝心の笑い声をどのように表現するのか、既存の字幕付き落語動画と何が異なるかなど根本的な問題があり、やはり対面での開催をしたいところです。
現状、プロの落語会などは対面で開催されていますが、まだまだ学生が対面でイベントを行うことは大学から禁止されており、プロジェクト内での対面活動すら難しい状況です。そのため、シミュレーションなども行えていませんでしたが、10月から条件付きで課外活動ができるようになったことを受け、実際のシミュレーションを始めたいと考えています。まずは舞台装置の組み立てとそれを利用したシミュレーションに取り組み、来年春の開催に向け年内には一度オンラインで実施したいと考えています。
また新型コロナウイルスの感染状況次第では、開催時期を早めることも検討中です。

<2020.6.8 更新>

1.提案時のプランの確認
バリアフリー寄席の開催によって、「字幕落語」や「共感照明」を通じて耳の聞こえない人と耳の聞こえる人が一緒に落語を楽しめるような空間を創出するというのが提案時のプランでした。現在もこの方針に変更はなく、このプランを基に実現に向けた取り組みをしているところです。また提案時のプランに加えて、聴覚障がい以外にもさまざまな落語を聞くうえでの障壁を取り除けるような工夫もしていきたいと考えています。

2.経過報告
有志によるプロジェクトメンバーを立ち上げて、演者やスタッフなどの役割分担を行い、演者を中心にバリアフリー寄席に適した演目の選定を行いました。
開催日程を2020年の夏休みに設定し、2019年10月から2020年1月にかけて、聴覚障がいについて詳しくリサーチを行いました。その結果、聴覚障がいをひとくくりに分類するには、あまりにも程度が広く、聴覚障がいの中でも軽度から重度なものまであり、聞こえないだけでなく認知に差があるケースも考えられることがわかりました。多様なレベルの聴覚障がいを抱える方がリアルタイムの落語で同じタイミングで内容を把握して笑わせることは非常に困難な課題であり、さらなる工夫が必要であると考えています。そこで、現状において分野として確立されている手話落語の動画などをリサーチして、どのようにバリアフリー寄席に反映させるか詳細な点をチェックしました。
2019年度2月末には、今回の取り組みが紹介された読売新聞の記事を見た向日市の要約筆記サークルの方から、大変ありがたいことに協力の申し出をいただきました。打ち合わせのうえで2020年8月26日に向日市の福祉会館でバリアフリー寄席を開催することになりました。また、4月には会場を見学し、サークルの実際の活動の場で聴覚障がい者の方へのヒアリング調査を行う予定でした。

3.新型コロナウイルスの影響
新型コロナウイルスの影響を受け、活動自粛を余儀なくされています。本プロジェクトも4月からほとんど活動ができていません。実際にシミュレーションを行うことでしか見通せないことの多い本プロジェクトにおいて対面での活動ができないことは致命的であり、準備が間に合わないことが想定されることから、8月26日のバリアフリー寄席は延期となり、4月のヒアリング調査も中止となりました。現在は各メンバーが在宅にて「多様なレベルの聴覚障がいを抱える方がリアルタイムの落語で同じタイミングで内容を把握して笑う」ための新たな方策がないか模索しているところです。


4.今後の展望
新型コロナウイルスが収束したのちに、実際にプロジェクターや照明などを用いたシミュレーションを何度か重ね、試行錯誤を繰り返していく予定です。
また、聴覚障がい者を対象として課題を解決したうえで、さまざまな障壁に対象を広げ、視覚障がいの方、身体が不自由で寄席の会場に来るのが困難な方、日本語を母語としない方など多様なバックグラウンドを持つ人にも笑ってもらえるような工夫を模索していきたいと考えています。

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