Vol.7 寄付者インタビュー

株式会社ホリグチ

代表取締役会長 堀口 靖之さん

HORIGUCHI YASUYUKI 1939年群馬県生まれ。1962年京都大学工学部化学機械学科卒業、1964年同工学研究科化学機械学専攻修了。1964年よりカナダのウォータールー大学大学院博士課程に進学、ティーチング・フェローとして4年間滞在した。その後、家業である株式会社ホリグチに入社。1983年代表取締役社長、2017年代表取締役会長。2013年に旭日双光章を受章。元・渋川商工会議所副会頭。





 建設資材販売のホリグチは、江戸時代初頭の1629年、群馬県において金物商として創業した。現在、ホリグチを中心に高圧ガスを製造販売するカンサン、工業用ガスや産業機器販売のマルホンなど11社のグループを構成する。
 創業者・堀口家の長男である靖之氏は、1964年に京都大学大学院工学研究科修士課程を修了し、当時としては非常に珍しかった海外留学を決意する。

          ◆  ◆  ◆


 家業を継ぐことは決まっていたので、その前に海外行きを経験したいとカナダへの留学を決めました。
 当時、研究室での留学経験者は先輩に2人いただけで、非常に珍しいことでしたし、1ドル360円の時代で、海外の大学からの入学許可はなかなか下りない。それでも教員の推薦状を得て、1957年に設立されたばかりの新しい大学だったウォータールー大学に研究奨学生として留学できることになりました。先輩2人は修士課程でしたが、博士課程での留学は私が最初でした。
 京都大学時代の仲間とは今も同期会を開催するなどつながりが続いているものの、カナダ留学時代の思い出のほうがより鮮烈です。それだけ珍しく貴重な経験だったからでしょうね。
 カナダでは寮生活を送り、今も連絡を取り合う友人ができたし、日系二世のファミリーにも大変お世話になりました。4年間滞在して、帰国しました。

          ◆  ◆  ◆

 ウォータールー大学同窓会には日本支部があり、初期の留学生だった私は1990年から2年間、会長を務めました。メンバーには大学教員が多く、中には国立大学の学長も。今でも2~3年ごとに会合を開いています。ただ、最近の悩みは新しく加入する人がおらず、高齢化が進んでいることです。カナダでは外国人留学生に対する奨学金が減少傾向にあり、ウォータールー大学に留学する日本人学生が少ないのが現状です。
 それでも、留学先という接点だけで、縦の世代がつながるのは貴重なことだと思います。こうした人脈はあなどれず、必ず先々活きてきます。今の学生には、いろいろなつながりを大切にしてほしいですね。

          ◆  ◆  ◆

 留学から50年以上も経つのに、いまだにウォータールー大学から年に何通もパンフレットが送られ、動画メールも定期的に届きます。大学同窓会誌、工学部会報、学長を囲む会の案内、同窓会支部連合会報、卒業式の招待状、もちろん寄付の案内もあります。1万キロの距離を越えて、です。 私は研究奨学生として奨学金をもらえたから留学が実現したし、いずれ恩返しをしたいと思ってきました。ですから、メールには必ず返信して、寄付もしています。
 京都大学からは2015年に案内が届いて、初めて基金のことを知り寄付をしました。最近は、地元の大学からも寄付の依頼がありますが、それでも日本の大学は寄付集めがあまり上手とは言えません。海外の大学は、こんな昔の留学生に対して、いまだに頻繁にコンタクトをとっている。日本の大学もそうしたやり方を見習うべきだと思います。
 アジアの大学では急スピードでグローバル化が進んでおり、日本の大学は立ち後れ感が否めません。教育・研究はもちろん、自己資金の強化なども海外を見習って、京都大学が世界に冠たる大学になってくれることを願っています。

(取材日:2016年11月)