Vol.8 寄付者インタビュー

ダイドーグループホールディングス株式会社

代表取締役社長 髙松 富也さん

TAKAMATSU TOMIYA 1976年奈良県生まれ。2001年京都大学経済学部を卒業後、三洋電機入社。2004年ダイドードリンコ入社。2008年取締役。常務取締役、専務取締役、取締役副社長を経て2014年より現職。2017年1月よりダイドーグループホールディングス代表取締役社長。

社風である「チャレンジする覚悟と勇気」を
自ら体現

 「自販機のダイドー」として知られるダイドードリンコは、商品の約85%を自動販売機チャネルで販売する清涼飲料メーカーである。総売上に占める自販機での売り上げ比率は業界平均の約3倍にも上り、個性豊かなドリンクと、ポイントカードやおしゃべり機能が付いているユニークな自販機で他社との差別化を図っている。
 このダイドードリンコの3代目社長を務めるのが髙松富也氏だ。
 同社の歴史は、戦後すぐに始めた医薬品配置販売業にある。そこから薬やドリンク剤の製造・販売を経て、自販機で缶コーヒーを販売する現在の姿へと変遷してきたが、この過程で、活路を求めてさまざまなチャレンジをしてきた。
 髙松社長自身、IoT技術を活用した自販機の展開や海外における新たな戦略拠点の確保など、次代の成長に向けた事業基盤整備に注力する。
 社風である「チャレンジする覚悟と勇気」を自ら体現する髙松社長だが、それでも京都大学時代を振り返ると、「もっといろいろなことをすればよかった」と思うという。

「野球以外のことに挑戦していれば」
という思いも

 入学当初、目標を見つけられず、小学生から続けていた野球も「もうやるまい」と思っていたのに、友人に誘われるままに体育会硬式野球部に入部した。
 中学・高校ではキャプテンを務め、自らのプレーで結果を出してチームを率いてきたが、高校野球で燃え尽きたという思いを拭えず、大学ではあまり活躍ができなかった。髙松社長は挫折感を味わいながらも裏方の役割を進んで担い、試合に出られないメンバーをとりまとめ、チームに貢献できるよう努めたという。
 そして、何年かぶりに関西学生野球のリーグ戦で関西学院大学から勝ち点を奪うなど、野球に打ち込んだことで得られたものもあった。1つは仲間、もう1つはチームワーク力だ。
 「会社運営を担う今の私にとって大切な力を磨く機会でした」。
 一方で、野球を続けたものの、「新たなことにチャレンジすべきだった」という思いがある。
 京大の自由な学風と、学生に寛容な京都の独特な雰囲気。社会との接点が少ないからこそ、勉強や好きなことに打ち込める環境にあったはずだ。下宿とグラウンドを往復する日々を、「楽しい学生時代でしたが、留学やアルバイトを通して、大学以外の違った世界に触れておけばよかったと今になって思います」と振り返る。

学生時代から社会に目を向け、
視野を広げることの大切さを知ってほしい

 好きなことに没頭できる大学生の特権は、今も変わりはないが、社会の変化は早い。特に、京大生は将来、世界で戦えるリーダーや研究者となるべき人材だ。WINDOW構想に共感する髙松社長だが、それが掲げる「野生的で賢い学生」の育成のためにも、多様な世界や文化、価値観を知ることは欠かせないという。
 そんな"思い残し"があったことで、「学生のうちに視野を広げてほしい」と、学生たちに将来の選択肢を増やす機会を増やすべく、2017年に設置された京都大学基金 企業寄付奨学金制度「CES:Kyoto U.Fund-Corporation Endowed Scholarships」への協力を会社として決めた。CESは、本学卒業生が活躍する民間企業からいただいたご寄付を、学生への支援に充てる給付型奨学金だ。
 「経済的な不安を少なくすることで、新たなチャレンジができるチャンスになればと思います」。

京大生のユニークさや
チャレンジ精神を伸ばすための取り組みを

 ここ数年、採用試験やインターンシップで学生と接して感じるのは、「安定志向」が強いことだという。
 しかし、日本の企業は変革期を迎えており、取り巻くルールや競争環境が変化するなか、企業も新たな成長に向けてダイナミックなチャレンジが迫られている。そうした企業で今後働くことになる学生も、チャレンジとは無縁でいられないはずだ。
 「本来、ユニークでチャレンジ精神に富んでいるのが京大生。大学はその個性を伸ばす取り組みをすべきであり、我々企業も学生や大学とつながりを深めながら、一端を担っていきたいと思います」。

(取材日:2017年6月)