Vol.18 寄付者インタビュー

HAYASHIDA MOTOHIRO 1960年大阪府生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。京セラ株式会社海外営業勤務。米国イリノイ大学シカゴ校経営学修士(MBA)取得。1985年株式会社林田順平商店入社。1991年ハヤシダインターナショナルINC(米国ケンタッキー州)創業、1999年ペガサスインベストメントINC(米国ウェストバージニア州)創業。
株式会社林田順平商店、株式会社林田製材所、阪堺産業株式会社、ハヤシダインターナショナルINC、ペガサスインベストメントINC代表取締役社長。

Q ご子息の入学を機にご寄付をいただきましたが、
  京都大学に対するどんな思いがあったのでしょうか?

 2015 年に息子が経済学部に入学し、4 年間お世話になる大学を少しでも支援したいと考えたことが直接のきっかけですが、もともと京都大学に頑張ってほしいという気持ちがありました。というのも、私自身は東京の私立大学出身ですが、生まれも育ちも大阪。世界の大学ランキングなどで、東京大学と京都大学が日本の大学として上位を争うのを見るにつけ、京都大学にこそトップに立って日本を引っ張っていってほしいと思っていたからです。
 1980年~90年代にかけて、水野彌一監督のもとでアメリカンフットボール部が学生王者に輝き、ライスボウルでも優勝、強豪相手を次々に倒すのを見て、痛快に感じたものです。
 常々、応援していましたから、寄付という形でお手伝いできることがうれしかったですね。

Q 林田さんが社長を務める林田順平商店と京都大学の共同研究は、
  どんないきさつで始まったのですか?

 寄付者特典として開催されている「感謝の集い」で、総長をはじめ理事や先生方とお話しする機会に恵まれた際、事業内容や研究したいと思っていることをお話ししたところ、専門の先生をご紹介いただけることになりました。
 当社は木材卸売業を基幹事業としており、ブランド製品である天然木ウリンはインドネシア・ボルネオ島が原産国で、100 年以上の耐久性を誇る木材として有名です。その特性など、さまざまな研究をすることが長年の夢でした。
 そして 2016 年より、生存圏研究所の金山公三教授(2020年 3 月退官)と共同研究がスタートしました。最初のテーマは「ウリン材の合法性に関する実態調査」。インドネシアは EU 主導のシステムによって、原木の位置から製造工程、在庫までをすべて徹底的に管理されているのですが、実態を調査した例がなかったのです。同時に、「端材の使用による環境負荷低減効果」についても研究しましたし、その後、シロアリ研究の大家である生存圏研究所の吉村剛教授と、ウリンの圧倒的な耐腐朽性について検証。今年に入ってからは農学研究科の神崎護教授と調印を交わし、熱帯雨林地方において、ウリンのような希少樹種も含めた植林をテーマに研究することになりました。
 次から次へとテーマは広がるのですが、京都大学には必ずその受け皿がある。「研究の裾野の広さ」こそ、京都大学の最大の強みではないでしょうか。
 我々のような中小企業が大学との共同研究を望んでも、なかなか相手にしてもらえないのが現実です。それが、京都大学基金への寄付をきっかけにつながりができ、最初のハードルをいくつも飛ばして、すぐに「できるか、できないか」という判断に入れたことが、何よりありがたかった。
 優れた技術力や開発力を持ち、大学との共同研究を希望する中小企業は多いはずです。大学の基金がマッチングの窓口になるような仕組みを、ぜひつくってほしいと思います。

Q 創立125周年に寄せて、
  京都大学にどんなことを期待されますか?

 125周年は積み重ねてきた研究の"力"や"幅広さ"の証でしょうが、そこにあぐらをかくことなく、進化を続けてください。
 私はいつも社員にこう言っています。「高度経済成長期は皆が上りのエスカレーターに乗っていて、普通に頑張れば上の階に行けたが、今は下りのエスカレーターの時代。まじめにゆっくり歩いていては、下の階に落ちるか現状維持でしかない。上の階に行こうと思えば、駆け上がるスピードが必要だ」と。駆け上がるための一つの方法が積極的な産学連携だと考えています。
 以前、ある大学の先生が、既存の知見であっても、深堀りをし、今までにない組み合わせにすることによって新しい知が生まれるものだとおっしゃっていました。125周年を契機に、伝統に基づく京都大学の知見と、接点のなかった企業が持つ知見、これらの新しい組み合わせによってブレークスルーを起こしていただきたい。共同研究のパートナーであり息子の母校である京都大学に、大きく期待しています。

(取材日:2020年5月)


goldman.jpg