Vol.1 奨学生インタビュー

遺伝子変異と薬の作用の関係を明らかに

 祖父が長く入院し、私自身も体が弱かったことがあり、薬について知りたいと思っていたこと、京都大学は最先端の知識が集まるところだと思っていたことから、京都大学薬学部を選びました。
 薬学部は4年次進級時に学科振り分けが行われますが、6年制の薬学科は定員が少ないため、必死で勉強しました。授業以外の空き時間は図書館で過ごしたり、友人とオンライン勉強会を開いたりしていました。
 4回生になって無事、希望どおり薬学科に配属され、医療薬剤学の研究室に所属しました。この研究室は、附属病院の医師や薬剤師と連携しながら、安全で質の高い医療の提供に貢献するために薬物動態などを研究し、トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)を推進しています。その中で、私はファーマコゲノミクス(PGx)という、遺伝子変異と薬の作用の関係を明らかにする研究を行っています。現在は患者さんの血液検体からDNAを抽出し、検査してデータ解析を行っています。
 1つの遺伝子を調べて治療を選ぶ方法はすでに保険診療が始まっています。私はさらに広げて、病気の発生に関わる多数の遺伝子を一度にまとめて調べる「遺伝子パネル検査」の効果について調査しています。この検査が日常診療で利用されるためのきっかけとなる研究をしたいと考えています。
 また、遺伝子タイプによって治療方針を検討する方法はがん領域で進んでいますが、私は臓器移植患者を対象にしています。京都大学の附属病院は移植手術の症例も多く、研究環境としても恵まれています。
 これまでは漠然と薬剤師になりたいと思っていましたが、病院の方々と接するようになり、病院薬剤師をめざすようになりました。病院には薬剤師業務をしながら研究をしている人も多く、私も同じように研究と臨床に携わり、橋渡しをできる存在になりたいと思います。

意欲さえあれば学びの機会は用意されている

 京都大学にはさまざまな地域から優秀な学生が集まっていて、その人たちと一緒に学べることはとても刺激になり、交流を通して自分の世界が広がったと感じます。
 1回生の時から、最先端の研究をしている先生たちによるリレー講義があり、さまざまな学ぶ機会が用意されていることも京都大学の魅力です。自分に意欲があって希望さえすれば、いくらでも学ぶ機会があるのですから、積極的に利用しない手はありません。

これまでの頑張りが認められた気持ちに

 1回生の時から薬局でアルバイトをしていますが、2回生の時に体調を崩してしまいました。精神的にも体力的にも余裕がなく、「親に支援してもらっているのに申し訳ない」という気持ちでいっぱいでした。その時は奨学金のことを考える余裕すらなかったのですが、学科振り分けが終わって少しだけゆとりができ、奨学金について調べるうちにCFプロジェクトのことを知りました。
 奨学金を支給いただいたおかげで、経済的な不安が軽減され、これまで以上に勉強、研究に集中できるようになりました。採択された時は、自分の頑張りが認められたという気持ちになり、とてもうれしく、自信にもつながりました。
 将来、大学生活で身につけた知識や経験を人の役に立て、今までいただいた支援を社会に還元していきたいと思っています。
 大変な思いをしている学生の皆さんも、いろいろな奨学金が用意されているので、自分に合った制度を探してほしいと思います。情報をキャッチするためにアンテナを広げておくこと、また、選考があるので普段からしっかり勉強しておくことも大切です。私自身、もっと早くから奨学金のことを調べておけばよかったと思っています。
 京大生の皆さんは非常に優秀で、ポテンシャルの高い人ばかり。経済的な理由で脱落していくのはもったいない。必要としている人に適切な支援が届いてほしいと思います。

(取材日:2023年8月)