「命を救え!」~行動に移せる勇気を小学生に

申請団体:新生Wild Idea
代表者:医学研究科修士2回生 小池 佳菜子


一次救命処置に対する心理的ブレーキを軽減する
シミュレーション競技を全国の小学校に普及

 現在、日本では年間約7万人の方が心臓突然死によって命を落としています。近くに居合わせた一般市民により胸骨圧迫が行われた場合の社会復帰率は2倍、AED(automated external defibrillator、自動体外式除細動器)が使用された場合にはさらに2倍の4倍になります。こうした一次救命処置(BLS:basic life support)の有効性が示されており、さらに日本のAED設置状況は世界的に見てトップクラスであるにもかかわらず、必要時の一般市民によるAED使用割合は5%未満にとどまっています

 私たちはこうした一次救命処置実施率の低さの原因として、心理的なブレーキが働くからだと考えています。不安や恐怖、恥ずかしさ、自信のなさ、他人任せにしたい、といったさまざまな感情が心の中のハードルとなり、行動に移すことを尻込みさせてしまうのです。こうした心理的ブレーキは学童期から徐々に形成されることがわかっています。

 そこで、私たちは小学生を対象に、一次救命処置に対する「なじみ」を育み、心理的ブレーキを予防・軽減することを目的に、レクリエーション的要素を取り入れたシミュレーション競技を考案しました。
 これは、胸骨圧迫やAEDの重要性を学んだあと、人形(通称:あつこ)を使用して胸骨圧迫とAEDを施し、チームごとにその技術の正確さとスピードを競うというもの。すでに11の小学校や地域でテスト済みで、体験後に興味関心が育まれ、心理的ブレーキが軽減される傾向が見られました。

代表者:医学研究科修士2回生
小池 佳菜子


新生Wild Ideaのメンバー


この取り組みを立ち上げた先輩たち
(中央が代表者)

 本プロジェクトの最終目標は、このシミュレーション競技が全国の小学校において、運動会などの種目や授業の一環に取り入れられ広く普及することです。
 その第一歩として、初年度は「地域や小学校などのフィールド5カ所以上での実施」、「"あつこズ"100人以上の育成」、「マニュアルの完成」を定めました。あつこズとは、人形の名「あつこ」にちなみ、シミュレーション競技の普及活動を小学生とともに行える人材のことです。
 次年度以降は、あつこズとともにマニュアルを全国に広める活動に力を入れ、段階的に活動を拡大していく予定です。

 シミュレーション競技を通して胸骨圧迫やAEDについて楽しみながら学び、なじみを持つことは、心理的ブレーキの形成の予防・軽減につながります。そして、その普及により、「いざという時、倒れた人に声をかける勇気」を育むきっかけとなることが期待されます。

競技の使用物品の一部


競技前の講義の様子

【初年度計画】
・小学校や地域のイベントでの実施
関西圏の小学校や教育委員会と交渉し、協力校を探します。総合学習や保健体育の時間、休日に生徒が集まる日、あるいは小学生を対象とした教育機関以外が主催する地域のイベントなども視野に、実施の実現を目指します。最終的には協力先による単独運営を目標にしていますが、初年度はあつこズが主体となって運営を担います。

・あつこズの育成
大学生をターゲットに、医学系だけでなく他学部学生や他校の学生も巻き込んで、あつこズ育成プログラムを2カ月に1回のペースで開催します。運営を円滑に進めるだけでなく、シミュレーション競技を広範囲に普及させるうえで重要となる人材を、初年度中に100人育成します。

・マニュアルの作成
現在、暫定版として作成しているマニュアルを、体験学習実施を通して小学校の先生方からフィードバックを得、さらに教育学の専門家からのアドバイスも受けて改良を加えます。マニュアル本を閲覧することで、自らが主体となって実施できる内容とします。

競技風景


あつこズの皆さん


あつこズ育成講座の様子