GENERAL PURPOSE FUND

西田哲学-千本基金

貴重な学問を忘却から守るために

 京都大学には130年近い歴史の中で、豊かな業績を生み出してきた本学発の学問分野が多数存在します。世界的にも知られる哲学者・西田幾多郎らを中心に形成された「京都学派」の哲学もその一つです。西田哲学や京都学派などの日本の独創的な哲学の教育と研究を担っているのが「日本哲学史専修」。今、この貴重な学問の研究拠点として世界からも注目されています。混沌を極める現代において哲学の重要性は高まっており、京都学派の哲学は、社会から注目を集める分野でもあります。

 しかし今、このような伝統ある研究分野は、資金不足のため教育・研究者を補充できないという問題を抱えています。また継承した貴重な史料も、管理されず未整理のままという状況におかれています。近年、この分野に関心を持つ学生、留学生、外国人研究者が増えている中、このような状態が続くと、学生指導が十分にできず、一方で貴重な史料も忘れられ、散逸・消失してしまいます。西田哲学、京都学派の本拠地たる本学が、貴重な知の遺産を守れなくなるという事態が起こるかもしれません。

画像出典:上田閑照『上田閑照集―第一巻』 岩波書店 『哲学論文集 第二』直筆原稿
(文学研究科図書館)

 この度、本学の卒業生で連続起業家の千本倖生氏からのご寄付により「西田哲学-千本基金」を創設しました。2024年度からの10年間で計3億円を日本哲学史専修に助成し、学問の継続と発展に必要な教育・研究者を確保するとともに、本専修が受け継ぐ貴重な学術史料の整理・公開を進めます。さらに、より多くの方々からのご寄付を募り、貴重な研究分野を忘却から守り、次世代へ承継・発展させ、社会へ還元していくことを目指します。

基金の使途

項 目

内 容

人材育成

後継者となる教育・研究者の確保

史料整理

専門史料の整理と維持、一般公開

海外の研究との連携および社会とのコミュニケーション

シンポジウムやワークショップの開催
海外からの研究者の招へい

教育研究支援体制の充実

事務・経理系業務、史料整理を担うラボマネジャーの確保



【これまでの活動報告】

 日本哲学史専修が計画している主な4つの事業の進捗状況を、以下の通りご報告いたします。

1.人材育成:教員の補充を目指し具体的な構想を練った。
2.京都学派の資料の整理・公開:田辺元の蔵書、遺稿を保管する群馬大学図書館との共同作業を開始。木村素衞のご遺族より蔵書を寄贈され、整理を開始。下村寅太郎の弟子が師を語る映像を制作、下村の音声講演録の内容を「第42回日本哲学史フォーラム」(専修主催の定期講演会)で初公開と記録映像の制作。2つの制作は京大オリジナル(株)に委託した。
3.国際的視野に立つ研究:パリ-京都学会「なぜ翻訳するのか?言語間で思索する必要性にのぞむ日仏哲学」(仏語)を、パリ・ナンテール大学と本基金との共催により、文学部で開催。
4.システム化:1・2・3を統合するシステム化に向けて、経理、教育環境整備、日本哲学のアウトリーチ・寄付活動の準備をそれぞれ担当する3名の若手研究者を雇用。システム化は京大オリジナル(株)の協力のもと進めている。


 千本倖生様より賜りましたご寄付により、西田幾多郎の思想が基盤となった京都大学の哲学知の遺産を適切に保存・公開し、またそれを現代の学術的研究と社会に再生させる取り組みの、確実な第一歩を踏み出すことができました。
 西田哲学と日本哲学の教育と研究が、連続企業家として国際的に大きな貢献をされてきた千本様の精神に支えられ、京都大学から新たな深まりと展開を世界へ発信できますよう、日本哲学史専修は最善を尽くしていきたいと考えています。
 下村寅太郎の弟子が師を語る映像は
こちらをご覧ください。
 「第42回日本哲学史フォーラム」(10月)の記録映像は
こちらをご覧ください。

大学全体への寄付に関する詳細に関しては
こちらをご覧ください。